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ヒゲを生やしはじめた職員に強制的に剃るよう命令できるか?

医療機関でよくみられる人事労務トラブル実例Q&A

Q 男性のリハビリスタッフが先日よりヒゲを生やしはじめました。何となく不潔感がありますし、他の職員が真似をするようになっても困ります。そこで、このヒゲを剃ることを命じたいのですが、問題ないでしょうか?

A 無精ヒゲならともかく、整えられたヒゲを剃ることを強要すれば、人権侵害行為に当たる可能性があり適切な指導とはいえません。医療や福祉に従事する職員として、患者や利用者に不快感を与えない身だしなみとは何か、職員が中心になって基準作りをすることをお勧めします。

詳細解説

医療機関・福祉施設においては、衛生管理が徹底されており、感染症防止の観点からも建物や機器などハード面の清掃は通常行き届いています。ところが、職員の身だしなみというソフト面に焦点を当ててみると、肩にフケがみられたり、髪がボサボサであったりと、およそ清潔感とは程遠い職員が存在することがあり、対応に苦慮する経営者も少なくありません。

今回のご質問にあるような職員がヒゲを生やす行為については、医療機関・福祉施設において時折みられますが、個性として生やしているヒゲを剃ることを強要すると、価値観の押し付けとなり、人権侵害行為にも繋がる可能性があるため、慎重な対応が求められます。

こうした点を検討するには、郵便事業(身だしなみ基準)事件(神戸地裁・平22.3.26)の判決が参考になります。この裁判では、男性職員の長髪やヒゲが評価の査定においてマイナス材料とされ、その違法性が争われました。判決では、「労働者の服装や髪型等の身だしなみについては、もともとは労働者個人が自己の外観をいかに表現するかという労働者的自由に属する事柄であり、髪型やヒゲに関する服務規律の規律は、勤務関係または労働契約の拘束を離れた私生活にも及び得るものであるから、そのような服務規律は事業遂行上の必要性が認められ、具体的な制限の内容が労働者の利益や自由を過度に侵害しない合理的な内容の限度で拘束力が認められるのである。そのため、男性職員の長髪及びヒゲを不可とする身だしなみ基準は、顧客に不快感を与えるような場合にのみに限定して適用されるべきである」と示され、郵政事業側に損害賠償の支払いを求めました。

もっとも上記裁判例でいう顧客に対する不快感とはどの程度であるのかという点は、考え方が分かれるところです。患者(利用者)から職員のヒゲは不潔であるといったような苦情が出るようであれば、患者(利用者)からの声ということで本人に伝え、意識を改めてもらうことによって自主的にヒゲを剃るという流れにもっていきたいところです。

しかしながら、こうした身だしなみに関する問題はピアスや女性のネイルアートなど、枚挙に暇がなく、最近は若い職員を中心に患者(利用者)の視点が欠落している者も増えています。よって、その都度経営者が職員の意識を変えてもらうように面談をするというよりも、むしろ職員自身がお互いに意識をして注意することができるように、職員が主体的となって独自の身だしなみガイドラインを作成するのが良いでしょう。こうした基準作りをする過程において、改めて自分自身が患者(利用者)視点であったのか振り返ることができ、職員の意識の改善に繋がることもあるのです。

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